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研究紹介

 我々の脳は、皮質脊髄路という脳と身体を結ぶ回線を用いて身体(筋)に運動の命令を出すことにより、思い通りの運動を行うことが出来ます。このとき、脳は、運動の命令を出す身体の状態がわからなければ、適切に身体に命令を下すことが出来ません。例えば、手で目の前のコップを掴もうとする時に、両手でバンザイしている、または両手をポケットに突っ込んでいたら、同じ目の前のコップを掴むという動作であっても、異なる運動を行わなければなりません。そのため、脳は自分の身体の正確な情報を持っており、絶えず身体の状態変化に目を光らせ、情報更新を行っていると考えられています。この脳の中の身体情報は、 身体図式、内部モデルとも呼ばれており、この情報を適切に用いることにより、自分の目的を達成するために最適な運動の計画を立て実行することが可能となります。

 

 脳損傷などによる運動障害では、この脳内の身体情報が直接または間接的にダメージ(変容)を受けることになります。この脳内の身体情報がダメージを受けると、脳が適切な身体情報を把握出来ないことにより思い通りの運動が出来なくなったり、さらには、運動麻痺した四肢の情報を失ってしまうことにより、脳が麻痺肢を存在しないかのように扱い、運動の命令を出さなくなる、つまり、麻痺肢を徐々に使わなくなります。このことは、運動障害のリハビリテーションにとって非常に大きな問題となります。特に、リハビリテーションは運動学習に大きく依存しています。そのため、学習効果は、一般に野球のバッティング練習と同じように運動を何回も繰り返すことにより得られるのですが、麻痺肢を使わなくなるというのはこの学習効果が期待できなくなることを意味しています。また、脳は、一度ダメージを受けると神経細胞は再生しないことが知られていますが、神経細胞同士のつながり(シナプス)はある条件を満たせば新たに作られることが知られています。その条件(ルール)とは、使用頻度依存であり、特にこの使用頻度に依存して脳が変化することをuse-dependent plasticity(使用頻度依存性可塑的変化)と呼ばれています。つまり、たくさん使えば新たな回路が作られ、逆に全く使われなければ回路はなくなってしまうということです。

 

 では、どのようにしたら麻痺肢の使用頻度を上げることが可能なのでしょうか?その答えは、まだ仮説にしか過ぎませんが、四肢切断患者さんの幻肢と呼ばれる現象に大きなヒントがあると我々は考えています。幻肢とは、何らかの理由により手足を失ってしまった人が、失った手足を依然と鮮明に感じ、思い通りに操作できるという現象です。手の幻肢がある患者さんに、テニスボールを突然投げ渡すと、思わず幻肢でキャッチしようとします。この現象は、突然四肢を失ったことにより、脳に依然として失った四肢の情報が存在し続けて、脳が失った四肢をまだ存在していると誤認している状態と考えられています。まさに、脳損傷で脳内の麻痺肢の身体情報がダメージを受け、動かさなくなってしまうという現象と逆の状態であると考えられます。つまり、脳損傷では、手足はあるのに脳ではその四肢が存在しないと考えてしまい、一方、幻肢では、存在しない手足を脳が存在すると誤認してしまう状態と考えられます。このように、存在しない四肢でも脳の中にその四肢の情報が存在すれば、脳は利用しようとこころみます。つまり、脳損傷後の麻痺肢が徐々に使わなくなっていく状態では、脳の麻痺肢の情報が徐々に消えつつあると考えられるのです。そこで、脳の中の麻痺肢の情報を正しく書き換えてあげると麻痺肢の使用頻度を上げることが可能になると考えられます。我々のグループでは、この脳内の身体情報を計測し、経頭蓋磁気刺激(TMS)、経頭蓋電気刺激(tDCS)などの手法や観察・模倣運動学習を用いて適正化を測るという研究を行っています。

研究トピック
疼痛Pain

- 幻肢痛

- CRPS

 

片麻痺(Hemiparesis)

​-

失語​aphasia)

-

介入手法
​観察・模倣運動
 
経頭蓋磁気刺激&経頭蓋直流電気刺激
バイオフィードバック

宮城県青葉区仙台市星陵町2−1

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